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弁護士が関心事等を書き留めるブログです。

大竹文雄『行動経済学の使い方』

 

新年を迎えるにあたりまして、「一年の目標を立てなければ」とあれこれ思案しつつ、これまでに達成できなかった諸々の目標に思いを馳せながら手を伸ばしたのが本書です。

本書は、 行動経済学や労働経済学を専門とする、大阪大学教授の大竹文雄氏による著作です。行動経済学におけるプロスペクト理論やヒューリスティクス等の基本的事項について端的に説明しつつ、それを労働、医療ひいては公共政策等に対し応用する方法について実践的に論じています。行動経済学に関する書籍は既に多数出版されていますが、本書は平易な言葉で簡潔に記されており、内容も非常に分かりやすいので関心のある方にはお勧めです。

とりわけ現在バイアスに関する解説については、我が身においても大変堪える内容でした。現在バイアスとは、「将来のことは我慢強い意思決定ができるのに、現在のことについてはせっかちな意思決定しかできないこと」をいい、要は夏休みの宿題や、ダイエット等に代表されるような不都合のことを指します。著者は、目標と行動のギャップを埋めることの重要性を論じ、合理的行動を図るリスク等に照らして、次善の策が事実上ベストの策である旨説いています。

といった次第で、私も本書の教えに忠実に従い、新年早々様々な計画を立ててみましたが、果たして実際いくつの目標を達成することが出来るのでしょうか。私自身にとっての「行動経済学の使い方」が正しいか否かは、いま暫し観察に耐えることが肝要なようです。